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イスラエル・ハマス戦闘

パレスチナ自治区ガザ地区を支配するイスラム組織ハマスが2023年10月7日、イスラエルへの戦闘を開始しました。

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折り紙で作った旗の意味 日本人女子高生が見たパレスチナ

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イスラエルがパレスチナ自治区に設置した分離壁には、中東の衛星テレビ「アルジャジーラ」のシリーン・アブアクレさんの肖像画が描かれている=ヨルダン川西岸で2023年3月、特定NPO法人Connection of the Children提供 拡大
イスラエルがパレスチナ自治区に設置した分離壁には、中東の衛星テレビ「アルジャジーラ」のシリーン・アブアクレさんの肖像画が描かれている=ヨルダン川西岸で2023年3月、特定NPO法人Connection of the Children提供

 「黒と赤と緑をちょうだい」

 日本からのお土産の折り紙セットを見て、パレスチナに住む10歳の少女は真っ先に3色を選んだ。そして、得意げな表情で1枚の旗を作ってみせた。黒、白、緑の水平三色旗に赤の三角形を合わせたパレスチナの旗だった。

 少女が旗をこしらえる様子を見守りながら、祖母は手をたたいて満面の笑みを浮かべた。現地を訪れ、折り紙をプレゼントした横浜市の高校1年の浅沼貴子さん(16)は違和感を覚えた。

 子どもがまず作りたくなるのが自分たちの「国」の旗。そしてそれを喜ぶ祖母。「日本でこんなことはあまりない。一体なぜ?」

 パレスチナを旅し、人々と接する中で浅沼さんは自分なりに答えを見いだしていった。

紛争地を知るツアー

 浅沼さんは、海外の紛争地で医師として働くのが夢だ。「紛争地の子どもたちの暮らしや現状を知りたい」と、2023年3月、国際交流に取り組む横浜市の特定NPO法人「Connection of the Children」が企画した6日間のパレスチナツアーに参加した。

孫娘が作った折り紙のパレスチナ旗をうれしそうに眺める女性=パレスチナ自治区のベツレヘムで2023年3月、特定NPO法人Connection of the Children提供 拡大
孫娘が作った折り紙のパレスチナ旗をうれしそうに眺める女性=パレスチナ自治区のベツレヘムで2023年3月、特定NPO法人Connection of the Children提供

 成田空港からイスラエル中部のテルアビブ経由でエルサレム入りした。イスラエル人が住む近代的な街はブランド店が並び、「横浜の『みなとみらい』みたい」と感じた。

 しかし、パレスチナ人が多く住む東エルサレムに入ると風景は一変した。

占領下で生きるということ

 道路の状態は悪く、老朽化した建物が目立つ。商店で売られていたバッグは偽ブランド品だった。「豊かさの違い」を強く感じた。

 東エルサレムは1967年の第3次中東戦争でイスラエルが一方的に併合した土地だ。同時にガザ地区とヨルダン川西岸も占領し、今日に至っている。

ユダヤ教の聖地「嘆きの壁」の周辺を歩くイスラエル兵士=エルサレム旧市街で2023年3月、特定NPO法人Connection of the Children提供 拡大
ユダヤ教の聖地「嘆きの壁」の周辺を歩くイスラエル兵士=エルサレム旧市街で2023年3月、特定NPO法人Connection of the Children提供

 東エルサレムでシェイクジャラと呼ばれる地区を訪ねた。石造りの家の前に小さなテントがあった。近所のパレスチナ人男性によると、この家を追い出された高齢の女性が立てたという。

 「違法建築」を理由にイスラエル当局はパレスチナ人が住む家を力ずくで撤去してきた。この地区には古いユダヤ人聖職者の墓があり、イスラエルにとっての「聖地」だ。欧州諸国が「占領地での強制撤去は国際人道法違反」といくら非難しようが聞こうとしない。

子どもたちへの影響

 折り紙でパレスチナの旗を作った少女の母マナールさん(43)に話を聞いた。

 祖父母が48年のイスラエル建国で土地を追われて難民になり、自身はヨルダン川西岸のベツレヘムにある難民キャンプで生まれ育ったという。

パレスチナ自治区のベツレヘムにある難民キャンプで生まれ育ったマナールさん。小さな建物に大勢の難民が密集して暮らしていたという=ベツレヘムで2023年3月、特定NPO法人Connection of the Children提供 拡大
パレスチナ自治区のベツレヘムにある難民キャンプで生まれ育ったマナールさん。小さな建物に大勢の難民が密集して暮らしていたという=ベツレヘムで2023年3月、特定NPO法人Connection of the Children提供

 古くて小さい建物に大勢の家族が密集し、窮屈な生活だったと語る。広場はなく、狭い路地で友人と遊んだ。難民ではない男性との結婚を機に両親とキャンプを出た。「ずっと出られない人もいる」と寂しげに話した。

 「子どもたちは何をして遊んでいますか」。浅沼さんの質問にマナールさんは「兵士とアラブ人」と答えた。

 イスラエル兵にふんした子がほかの子を追いかける。日本でいえば鬼ごっこだが、イスラエル兵が「鬼」だ。70年以上続く紛争は子どもたちに影響を与えている。

パレスチナの平和とは

 浅沼さんはエルサレムにある「ホロコースト記念館」も訪れた。ナチス・ドイツによるユダヤ人大虐殺を伝える施設だ。銃殺の映像を見せ、人体実験の資料を展示していた。

 「ユダヤ人が武力をもってでも国を守りたい気持ちは分かりました。でもパレスチナ人を迫害していい理由にはならない」

イスラエルがパレスチナ自治区との間に設置した分離壁の前を歩く浅沼貴子さん。風船を手に壁を越えようとする少女を描いた絵は覆面アーティスト、バンクシーの作品=パレスチナ自治区ヨルダン川西岸で2023年3月、特定NPO法人Connection of the Children提供 拡大
イスラエルがパレスチナ自治区との間に設置した分離壁の前を歩く浅沼貴子さん。風船を手に壁を越えようとする少女を描いた絵は覆面アーティスト、バンクシーの作品=パレスチナ自治区ヨルダン川西岸で2023年3月、特定NPO法人Connection of the Children提供

 イスラエルによる占領政策に翻弄(ほんろう)されてきたパレスチナ人。

 「彼らにとっての平和とは、自分の土地や元の生活を取り戻すことであって、それは日本人が思う平和とは違うのかもしれない」

 孫娘の作ったパレスチナ旗を見て大喜びするマナールさんの母の姿に戸惑った浅沼さんだったが、そう思うようになったという。

同級生の反応にもめげず

 10月7日のイスラム組織ハマスによる攻撃を受け、イスラエル軍がガザ地区を激しく攻撃している。難民キャンプも破壊され、ガザ住民を中心に死者は1万人を超えた。浅沼さんは「追われた人はどこに行けばいい? ガザから出られない人はどこに逃げればいい?」と声を震わせた。

 今、学校で友達にパレスチナについて話している。「一人でも犠牲者を減らしたい。日本からも戦闘をやめるよう声を上げたい」と思っている。「そうなんだ」という反応で会話は盛り上がらない。

エルサレムにあるホロコースト記念館の写真を見せて、現地での経験を語る浅沼貴子さん(左)と津高政志さん=横浜市西区で2023年10月20日午後8時46分、宮川佐知子撮影 拡大
エルサレムにあるホロコースト記念館の写真を見せて、現地での経験を語る浅沼貴子さん(左)と津高政志さん=横浜市西区で2023年10月20日午後8時46分、宮川佐知子撮影

 めげずに先生たちにも伝えた。「社会の授業時間に体験を話してみないか」との提案を受けた。

 現地で案内役を務めた特定NPO法人の理事、津高政志さん(40)は「浅沼さんには、今回の旅を通じて紛争地の機微に触れる問題に敏感になってもらえた。これからも自分なりに理解した平和への考えを伝えてほしいです」と話した。【宮川佐知子】

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